まずは、今回のプロジェクトの依頼を受けたところから、どのように形にしていったのでしょうか?
竹中:「まずご依頼をいただいた時、描くシーンは最終決戦イメージで『3枚続き』にしてくださいということでした。緑谷出久・爆豪勝己・轟焦凍、それぞれの絵を3枚並べたときに繋がるように作ってくださいということですね。
もうひとつ、アニメと同じものじゃなくて、ヒロアカであるけども、今までにない形で、完全オリジナルで(絵を)作ってください、ということ。
じゃあ僕らは人物が主体となる、浮世絵の木版画を作ろう、と。今まで作られてたいろんな浮世絵師のイメージを持って、どれが一番合うんだろうか、スタイルをどれにしようかっていう時に、(キャラクターの戦闘ポーズである)形を決めなあかんかったんで、僕がモデルになって形をとって絵師の一生(かずき)に描いてもらう、浮世絵師でいうと「芳年(よしとし)」風でいくことにしました」
「芳年(よしとし)」風とはどういうことですか?
竹中:「人物画で人気の師弟であった国芳(歌川国芳・うたがわくによし(1797-1861))と芳年(月岡芳年・つきおか よしとし、天保10年〈1839年〉- 明治25年〈1892年〉)は、国芳までは人物の手順の描き方に基本があったようです。歌川系はこう、北斎系はこういう風に描く……という基本の型が決まっていて、私たちが見るとほとんど一緒なんです。顔の形もずっと一緒。その後、芳年の時代に西洋の画風が入ってきて、モデルを使うようになるんです。モデルを使って描くから、芳年は動きに臨場感がある。で、今回はモデルを使って人物の形を決めよう、芳年の採ったやり方で行こう、と決めたということです。浮世絵の歴史からそのエッセンスを反映したということで、芳年の絵の中の人物のポーズをそのまま写した、ということではありません」
キャラクターそれぞれに異なるポージングはどのように決めたのでしょうか?
竹中:「アニメを見て、この子らの戦い方を覚えて、タイプ別に考えていきました。デクくんやったら、いろんな個性”を継承しているので、アルティメット系の形。色々合体してる総合格闘技みたいな感じで、アクロバティックでもあるし、伝統的でもある。轟くんはそば好きだったり日本の和の感じがある。なので、伝統的な空手の形に。爆豪くんはアクロバティックなんで、スノーボードで空中を飛んでる感じのイメージで作ってあります。僕が武道やスノーボードをしているので、その感覚でモデルとしてポーズをとり、最終的な形を決めていきました」

その他に、「浮世絵」として描くにあたって意識されたところはありますか?
竹中:3人の顔を浮世絵の特徴を持った感じで描くために、線や色は工夫していますね。この黒い輪郭線があるんですけども、これは浮世絵ぽいというか、今の描き方ではない線の感じなんですね。太なったり細かったりしてる。カクカクしてたりとか、ストレートじゃないんですよね。昔は筆で描くんで。筆は細いところ、太いところと強弱を持っている。その力の加減を見せるっていうのができる。綿々と続いた日本の技やから、この線が出る。あとはこのぼかしも、木版画独特ですよね。今回、彫師の一生が絵師も務めてますけど、今までに自分が彫ってきた浮世絵の木版画の線を考え、描いたのがこの形なんです。その後、僕が江戸時代の浮世絵木版画らしい色を少し考えつつ、この3人のカラーイメージを持って現代に合わせた色に仕上げていきました。
あとはさらに、摺師である僕のことを考えて、僕が摺りやすいように彫ってくれています。


摺りやすいように、というのはどういうことなんでしょうか?
竹中:味わった者しかわからへんところがあると思うので、表現にするのが難しいのですが……何かが違うんですよ。“摺りやすい”版というのがある。気が優しいというか、尖ってないんですよ。摺らしてあげるよ、というような感じです。摺るのが楽というか、余計な負担がない。










